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2020年に行われた調査では、何らかの出生前診断を受けた方の割合は、35歳未満17.1%ですので、20代の妊婦さんで受けた人の割合は更に少ないと考えられます。
産婦人科医
西田 玲子
にしだれいこ
・昭和59年徳島大学医学部卒業 ・東京医科歯科大学産婦人科、都立病院等に勤務 ・平成7年9月、横浜市都筑区にてにしだファミリークリニック開業 ・平成30年3月閉院 ・産婦人科医・専門:内分泌(思春期・成人の卵巣機能不全、不妊症、更年期
20代が出生前診断を受ける割合が低い理由
- 染色体異常は加齢と共に増えるので、若いママたちは胎児が疾患を有する可能性が低いと考えていること
- 妊娠、出産に対する知識が十分ではないこと
- 受けたいが費用対効果を考えるとメリットが少ないように思われること
- 検査のための費用が捻出できないこと
- 若い人への出生前診断は積極的には勧めていない医療機関が多いこと
20代でも染色体異常などの疾患がゼロではありません。
などが考えられます。
30代が出生前診断を受ける割合
2020年に行われた調査では、何らかの出生前診断を受けた方の割合は、35歳未満17.1%、35~39歳34.7%、30代になると、出生前診断を受ける割合は高まっています。
30代の人たちが出生前診断を受ける割合が増える理由としては、
- 染色体異常は加齢と共に増えること
- 一般的に35歳以上ではじめて出産することを高齢出産といいますが、高齢出産が増えることにより、染色体異常を身近に捉えるようになったこと
- 女性が生涯に産む子どもの数が減り、1人にかける養育費、教育費が増えてきたこと
- 結婚年齢が遅くなることで不妊症が増え、妊娠、出産がとても貴重になってきたこと
例えば30歳で出産する場合、ダウン症児が生まれる確率は約1000人に1人であるのに対して、40歳では約100人に1人と、10倍ほどに上がります。他の先天性異常を含めると、更に高くなります。
40代が出生前診断を受ける割合
40歳以上では59.1%となっています。40代になると、出生前診断を受ける割合は高まっています。40代の人たちが出生前診断を受ける割合が増える理由としては、
出生前検査・診断とはなにか?
- 妊娠中に胎児が何らかの疾患に罹患していると思われる場合
- 胎児の異常はあきらかではないが、何らかの理由で胎児が疾患を有する可能性が高くなっていると考えられる場合
これらの場合に正確な病態を知る目的で検査を行うことで、確定検査には以下があります。
絨毛検査 | 妊娠11〜14週 |
羊水検査 | 妊娠15〜6週以降 |
赤ちゃんの疾患が予測されないケースがほとんどなので、若干のリスクがある確定検査を受ける前に、ほぼリスクのないスクリーニング検査をして、異常が疑われる場合にのみ羊水検査で確定することになります。(※ 羊水検査や絨毛検査では、稀ですが流産のリスクがあります。)
スクリーニング検査として現在使われているのは以下2つがあります。
- NIPT(新型出生前診断)
- 超音波検査
NIPT検査では一部の染色体や遺伝子の異常による疾患、例えば21トリソミー(ダウン症)、13トリソミー、18トリソミーなどがわかります。施設により、更に多くの疾患を検査できるところもあります。
NIPT検査は採血のみで行われるため、お腹の赤ちゃんへの影響が無く、安全で簡便な検査と言えます。
NIPT検査は一般的には10〜16週で行います。
NIPT検査の対象になる妊婦
- 高年齢の妊婦
- 母体血清マーカー検査で、胎児に染色体異常を有する可能性が示唆された妊婦
- 染色体異常を有する児を妊娠した過去のある妊婦
- 両親のいずれかが均衡型転座やロバートソン型転座を有していて、胎児が13トリソミーまたは21トリソミーとなる可能性が示唆される妊婦
- 胎児超音波検査で、胎児が染色体異常を有する可能性が示唆された妊婦
専門的な知識を要するので、遺伝カウンセリングのしっかりしている医療機関で受けるのがお勧めです。
ただ、出生前検査を受けて異常が無かったとしても、
全ての病気が否定できる訳ではありません。
分娩時に障がいを負ったり、成長過程で先天性の障がいが現れたり、病気やケガを負うこともあるでしょう。
代謝異常、自閉症やADHDなどの発達障がい、視覚や聴覚などの障がいなどは出生前検査ではわかりません。
ですので、出生前検査のメリット、デメリットをよく検討する必要があります。
出生前検査のメリット、デメリット
では、検査のメリット、デメリットを考えてみましょう。
結果が陰性と出た場合
マタニティブルーという言葉があるくらいに、メンタルが不安定になる妊婦さん。不安の種が一つ減ることになり、それだけでも随分と心が穏やかになります。
もちろん、染色体異常以外の障がいや感染症や代謝異常などのリスクはあるものの、染色体異常だけでも否定できると妊婦さんの気持ちはかなり楽になるでしょう。
結果が陽性と出た場合
NIPT検査はあくまでもスクリーニング検査ですから、確定診断のための羊水検査を受ける事になります。
- 出生前に胎児の状態や病気の有無を調べて、お母さんと赤ちゃんにとって最適な分娩方法や治療、療育環境を準備することができます。
- 出生後速やかな治療が受けられる病院で出産することも可能になります。
- 胎児のうちに治療できることもあるかもしれません。
- 妊娠中に赤ちゃんの病気や障害についての理解を深め、赤ちゃんを迎える心の準備をしておくこともできるでしょう。
- 赤ちゃんや家族へのサポート体制、保育園などの環境を前もって検討することができます。
出生前診断を受ける場合も、受けない場合も、授かった命を何があろうと受け入れる、という決心を妊娠中のどこかの時点でしたいですね。
その決意ができたら、それこそ「母は強し」!
家族で力を合わせて、これから生まれる小さな命を守っていきましょう。
しかし、家庭にはそれぞれの複雑な事情があります。万が一、お母さんやご家族にとって、赤ちゃんの障がいが重くて育てられないという苦渋の選択をした場合、中期中絶は22週未満までになります。
まとめ
出生前検査を受けるかどうか悩みますが、どちらが正解と言うことはありません。夫婦でよく話し合いましょう。
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